エリシターとは?意味をわかりやすく簡単に解説
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エリシターとは?意味をわかりやすく簡単に解説

text: LEAFLA編集部

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エリシターとは

エリシターとは、植物が病原体などの外敵から身を守るために誘導される防御応答を引き起こす物質のことを指します。植物の細胞内で特定のタンパク質や代謝物質の生産を促進し、免疫システムを活性化させる重要な役割を担っています。

エリシターには微生物由来のものと植物自身が生成する内生性のものが存在し、それぞれ異なる経路で植物の防御応答を誘導します。病原体の細胞壁成分やタンパク質などの外来性エリシターは、植物の受容体によって認識されることで防御反応のシグナル伝達を開始するのです。

植物の防御応答において、エリシターは二次代謝産物の生産やファイトアレキシンの合成を促進する働きを持っています。これらの物質は病原体の増殖を抑制したり、害虫から植物を守る防御物質として機能したりするのです。

近年の研究では、エリシターを農業分野に応用する取り組みが進められており、化学農薬の使用量を削減する新しい植物保護技術として注目を集めています。植物の自然な防御機能を活用することで、環境への負荷を軽減した持続可能な農業生産が期待されているのです。

エリシターの作用機序は非常に複雑で、植物種や病原体の種類によって異なる応答を示すことが明らかになっています。このため、各種植物に対する最適なエリシター処理の条件や timing を見極めることが重要になってきます。

エリシターの植物防御システムへの影響

エリシターの植物防御システムへの影響に関して、以下を簡単に解説していきます。

  1. シグナル伝達経路の活性化
  2. 防御関連遺伝子の発現制御
  3. 二次代謝産物の生産誘導

シグナル伝達経路の活性化

エリシターが植物細胞の表面にある受容体に結合すると、カルシウムイオンの細胞内濃度が急激に上昇し、MAP キナーゼカスケードが活性化されます。この過程で活性酸素種の産生や膜電位の変化が引き起こされ、防御応答のための初期シグナルが形成されるのです。

シグナル伝達経路の活性化により、植物ホルモンであるジャスモン酸サリチル酸の生合成が促進され、システム獲得抵抗性が誘導されます。これらのホルモンは、病原体の感染に対する植物全体の防御能力を高める重要な因子として機能しているのです。

活性化されたシグナル伝達経路は、転写因子の発現を制御することで、様々な防御関連遺伝子の発現パターンを変化させています。この制御システムにより、植物は効率的かつ適切な防御応答を展開できるようになっているのです。

防御関連遺伝子の発現制御

エリシター処理を受けた植物細胞では、PR タンパク質やキチナーゼなどの防御関連タンパク質をコードする遺伝子の発現が著しく上昇します。これらのタンパク質は、病原菌の細胞壁を分解したり、増殖を抑制したりする抗菌活性を持っているのです。

防御関連遺伝子の発現制御には、複数の転写因子が関与しており、それぞれが特異的な遺伝子群の発現を調節しています。この精密な制御メカニズムにより、植物は効果的な防御応答を維持しながら、不必要なエネルギー消費を抑えることができます。

遺伝子発現の変化は、エリシター処理後数時間以内に検出され、その影響は数日間持続することが確認されています。この持続的な発現変化により、植物は長期的な防御能力を獲得し、病原体への抵抗性を維持できるようになるのです。

二次代謝産物の生産誘導

エリシター刺激を受けた植物細胞では、フラボノイドやフェニルプロパノイドなどの二次代謝産物の生合成が活発化されます。これらの化合物は、抗菌活性や抗酸化作用を持ち、植物の防御システムにおいて重要な役割を果たしているのです。

二次代謝産物の中でも特に重要なのがファイトアレキシンと呼ばれる化合物群で、これらは病原体の感染に応答して特異的に生産される抗菌性物質です。ファイトアレキシンの蓄積により、植物は効果的に病原体の増殖を抑制することができるのです。

エリシターによって誘導される二次代謝産物は、植物種によって異なる特徴的な化学構造を持っており、それぞれが特異的な防御機能を発揮します。これらの物質の多様性により、植物は様々な病原体に対して効果的な防御戦略を展開できるようになっているのです。

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