CAM回路とは?意味をわかりやすく簡単に解説
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CAM回路とは?意味をわかりやすく簡単に解説

text: LEAFLA編集部


CAM回路とは

CAM回路とは、乾燥地域に生息する多肉植物が進化の過程で獲得した特殊な光合成メカニズムのひとつです。日中の水分損失を防ぐため、夜間に気孔を開いて二酸化炭素を取り込む適応戦略となっています。

CAM回路を持つ植物は、夜間に取り込んだ二酸化炭素をリンゴ酸として一時的に蓄積し、日中の光合成に利用する独特の代謝経路を確立しています。この仕組みにより、気温が高く乾燥した環境でも効率的に光合成を行えます。

サボテンやアイスプラントなどの砂漠性植物は、CAM回路による光合成を行うことで、極端な乾燥環境下でも生存が可能となっています。通常の植物と比べて水利用効率が著しく高く、少ない水分で効率的に光合成できます。

CAM回路を持つ植物は、昼夜で異なる代謝経路を使い分けることで、限られた水資源を最大限に活用する戦略を確立しています。夜間の二酸化炭素固定と日中の光合成を時間的に分離することで、水分損失を最小限に抑えられます。

地球温暖化による気候変動で乾燥地域が拡大する中、CAM回路による光合成は注目を集めています。従来型の光合成に比べて水利用効率が格段に高く、乾燥に強い作物の開発にも応用が期待されます。

CAM回路の生理学的メカニズム

CAM回路の生理学的メカニズムに関して、以下を簡単に解説していきます。

  1. 昼夜の代謝サイクル
  2. 細胞内での物質変換
  3. 環境応答システム

昼夜の代謝サイクル

夜間のCAM回路では、開いた気孔から取り込まれた二酸化炭素がホスホエノールピルビン酸と結合してリンゴ酸を生成します。この過程で生成されたリンゴ酸は液胞に蓄積され、日中の光合成の基質として利用されることになります。

日中のCAM回路では、液胞に蓄積されたリンゴ酸が細胞質に放出され、脱炭酸反応によって二酸化炭素とピルビン酸に分解されます。放出された二酸化炭素はカルビン回路で利用され、光合成による糖の生成が行われていきます。

CAM回路の代謝サイクルは、概日リズムによって厳密に制御されており、外部環境の変化に応じて柔軟に調整されています。この制御システムにより、昼夜での効率的な物質変換と光合成が実現されているのです。

細胞内での物質変換

CAM回路における物質変換の中心的な役割を担うのが、リンゴ酸デヒドロゲナーゼやホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼなどの酵素群です。これらの酵素は、細胞質と液胞の間での物質輸送を効率的に制御しています。

細胞内での物質変換過程では、アデノシン三リン酸やニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸などの補酵素が重要な役割を果たしています。これらの補酵素は、エネルギー変換と電子伝達を担い、効率的な代謝を支えています。

CAM回路での物質変換には、複数の細胞小器官が連携して関与しており、特に液胞と葉緑体の機能的な結びつきが重要となっています。この連携により、昼夜のサイクルに応じた効率的な物質変換が実現されることになります。

環境応答システム

CAM回路を持つ植物は、環境ストレスに応じて代謝経路を柔軟に切り替えることができ、特に水分状態や光強度の変化に敏感に反応します。この適応能力により、厳しい環境下でも安定した光合成活性を維持できているのです。

気孔開閉の制御には、アブシジン酸やサイトカイニンなどの植物ホルモンが重要な役割を果たしています。これらのホルモンは、環境シグナルを感知して気孔の開閉を調節し、水分損失を最小限に抑える働きをしています。

環境応答システムでは、遺伝子発現レベルでの制御も重要な役割を果たしており、ストレス応答性の転写因子が活性化されることで、適切な代謝調節が行われています。この仕組みにより、環境変化への迅速な対応が可能となるのです。

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