特集・コラム
見るほどに発見がある秋の植物たち。ニコライ・バーグマンさんに聞く「THE ART OF AUTUMN 2026」設営の舞台裏
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設営中のニコライ・バーグマンさん。紅葉した葉の作品に、枝を一本ずつ挿していく(撮影:リーフラ編集部)
10月20日(火)から東京ガーデンテラス紀尾井町で始まる「THE ART OF AUTUMN 2026」。その2日前の10月18日、赤坂プリンス クラシックハウス前の水の広場では、フラワーアーティストのニコライ・バーグマンさんとスタッフの皆さんが、かぼちゃや実もの、枝ものなど秋の植物を使ったハロウィンの作品を仕上げていました。リーフラ編集部は設営の現場を取材し、ニコライさんに作品に込めた思いを聞きました。ぱっと見ただけでは分からない細部に込めた工夫と、作品の楽しみ方とは。
開催情報
- ・イベント名:THE ART OF AUTUMN 2026
- ・期間:2026年10月20日(火)〜11月1日(日)
- ・会場:東京ガーデンテラス紀尾井町 紀尾井テラス4F 水の広場
- ・料金:観覧無料
- ・10/31(土):16:00〜 ニコライ・バーグマンさんのフラワーデモンストレーション(申込不要)、16:40〜 写真集『KUMIAWASE 組み合わせ』のサイン会
- ・アクセス:東京メトロ「永田町駅」9a出口直結
延べ21人、約30時間。歴史ある洋館の前で進む設営
クラシックハウスの前に並ぶ作品。取材時は制作半ばだった(撮影:リーフラ編集部)
会場は、1930年に建てられた洋館・赤坂プリンス クラシックハウスの前に広がる水の広場。設営は10月17日から19日までの3日間で、毎日朝7時30分ごろから夕方17時ごろまで、合わせて約30時間をかけて作品を仕上げました。携わったのは、延べ約20人のスタッフに、ニコライさんを加えた21人。ふだんは各店舗で働くスタッフも加わり、ニコライさん自身もかぼちゃを抱えて運び、枝を一本ずつ挿していきました。
大きなかぼちゃを自ら運ぶ(撮影:リーフラ編集部)
作品の中にかぼちゃを据えていく(撮影:リーフラ編集部)
数字で見る「THE ART OF AUTUMN 2026」
- ・設営:10月17日〜19日の3日間、延べ約21人(ニコライさんを含む)で約30時間
- ・花材の種類:約20種類(品種の違いは数えず、アジサイ、かぼちゃなど植物の種類で数えた数)
- ・鉢物:約300鉢(マム、マリーゴールド、ソラナム、セロシア、トウガラシなど)
- ・かぼちゃ:約350個(品種や色の違うものを集めた)
- ・ススキ:約5,000本。すべて箱根から
- ・その他の花材:約2,500本(フォックスフェイス、ファーガス、ツルウメモドキ、パンパスグラス、月桃の実、ウンリュウヤナギなど)
テーマは「流れ」と「移ろい」。秋は色が楽しい季節
今回のテーマは「流れ」と「移ろい」。花でどう表現したのかを聞くと、ニコライさんはまず秋という季節の面白さを話してくれました。
「秋は、花の世界の中でも変化が大きくて、楽しい季節。夏なら、きれいなオレンジやピンクの花がいくらでもあるけれど、秋のピンクはそれほど多くはありません。だから秋は、黄色、オレンジ、赤、茶色といった色が楽しいんです」
作品には、かぼちゃや紅葉した葉、さまざまな枝、そして箱根から運んだ約5,000本のススキなどが使われています。黄色い実のフォックスフェイスのように、細かな色のポイントが次々と入ってくるのが秋の花材ならでは。春と同じオブジェのスタイルでも、作り方や中身はまったく違うそうです。
「下に入れたススキも、とても丁寧に入れています。ぱっと見ただけでは分からないかもしれないけれど、実はすごく細かく作っているんです」
取材中、作品の細部についても教えてもらいました。束ねた茎の断面には、赤く色づいている部分もあります。こうした細かな部分にある小さな違いも楽しめるように、一つひとつにこだわっているそうです。訪れた方々の会話のきっかけとなるような細かな要素に至るまで、丁寧に作り込まれています。
束ねた茎の断面からのぞく、ツルウメモドキの赤い実(撮影:リーフラ編集部)
カラーグラデーションが美しい葉と枝の作品(撮影:リーフラ編集部)
葉の色の重なり。近くで見ると一枚ずつ色が違う(撮影:リーフラ編集部)
4つの作品は、すべて違う。「一周して見てほしい」
水の広場には、4つの作品(スカルプチャー)が並びます。特に注目してほしい花材を聞くと、ニコライさんが挙げたのはかぼちゃでした。作品に使われたかぼちゃは、およそ350個。
「かぼちゃひとつとっても、品種や色の違うものを頑張って集めました。サーモンピンクのようなかぼちゃは、そう多くは見かけないと思います。『これ、見たことないね』というサプライズを、いつも考えているんです」
「春のバラのときは、それぞれの作品が違っても、ニュアンスは少し似ていました。今回は、4つがそれぞれはっきり違うものになっています。全体を眺めるだけでなく、1つ1つじっくり、一周して見てほしい。」
後日、制作に携わったスタッフの方に、今回の制作で特に難しかった点をうかがうと、次のような答えが返ってきました。
「かぼちゃや植物など、一つひとつ形や大きさが異なる自然素材を使いながら、全体のバランスを整えていく作業です。自然素材ならではの個性を生かしつつ、360度どの角度から見ても美しく見えるよう、配置や高低差、色のグラデーションを細かく調整しています。同じものは二つとない植物や花の個性を、どう一つの作品として調和させるか。自然の偶然性を生かしながら、計算された美しさをつくり上げることが、今回特に難しかった点です」
「一周して見てほしい」という言葉の背景には、どの方向から見ても作品が成り立つように重ねられた、こうした細かな調整があります。
黄色いフォックスフェイスの実をちりばめた作品(撮影:リーフラ編集部)
ススキの穂に覆われた上部と、パンパスグラス(撮影:リーフラ編集部)
丸く仕立てたマムを運ぶニコライさん(撮影:リーフラ編集部)
土台の縁を彩るツルウメモドキ(撮影:リーフラ編集部)
ススキを丸く盛った作品の土台(撮影:リーフラ編集部)
作品に使われる、さまざまな品種のかぼちゃ(撮影:リーフラ編集部)
リーフラの花材ミニ解説

今回の作品の土台を彩るツルウメモドキ
ツルウメモドキ
秋に黄色い皮が割れて、中から赤い実がのぞくつる性の植物。日本の秋の「実もの」花材の代表格です。

柱のような作品にちりばめられた黄色い実
フォックスフェイス
黄色い実がキツネの顔に見えることからこの名前に。ナス科で、和名は「ツノナス」。観賞用です。

作品の上部を覆うふわふわの穂
パンパスグラス
ふわふわとした大きな穂をつけるイネ科の植物。秋のディスプレイに、やわらかな動きと光を加えます。
ヨーロッパにない、日本の「枝もの」と「実もの」
デンマークで育ち、日本で長く活動してきたニコライさんにとって、日本の秋は特別なものだといいます。
「日本の秋が私にとって特別なのは、ヨーロッパにはない枝ものや実ものが、本当にたくさんあることです。今回使っているツルウメモドキや、これからの季節のナナカマドのオレンジの実を見ると、『秋が始まったな』とワクワクします。日本に来てから、ずっとそうなんです」
栗やアケビも大好きだというニコライさん。ハロウィンについては、この10年ほどで、かぼちゃを飾ったり、こうしたインスタレーションを楽しみにしたりする人がどんどん増えてきたと感じているそうです。今回の作品は、その日本の枝もの・実ものと、ハロウィンの楽しさを取り入れたもの。もう一つ、こんなことも教えてくれました。
「プラスチックや雑貨は、何も使っていません。見えているものは、全部本物です」
朝と夕方、暗くなる頃で、雰囲気がまったく違う
歴史ある洋館を背景に。時間帯によって光の当たり方が変わる(撮影:リーフラ編集部)
おすすめの見方を聞くと、細かな部分の作り込みに加えて、「光」を挙げてくれました。
「朝の光と夕方、そして少し暗くなるまでの間、雰囲気がまったく違います。それも一つの楽しみだと思います」
ビルに囲まれた場所でも、時間帯によって作品の見え方は変わります。一度だけでなく、時間を変えて訪れるのもよさそうです。
「組み合わせ」は、花だけのことではない
2026年9月に、25年間の創作をまとめた写真集『KUMIAWASE 組み合わせ』を出版したニコライさん。その「組み合わせ」の考え方が今回の作品にどう生きているのかを聞きました。4つの作品は、組み合わせ方も、使っている材料もまったく違います。そのうえで、ニコライさんはこう続けました。
「この本ができてから、自分でも分かってきたことがあります。組み合わせは、花だけのことではないんです。スタッフのチームワークや、新しい出会い、人の新しい経験も、一つひとつが組み合わせ。人とチームワークがないと、こういうものは何もできませんから」
スタッフと一緒に作品を仕上げていく(撮影:リーフラ編集部)
設営には、ふだんは店舗で働くスタッフも参加しています。いつもと違う現場での経験を店舗に持ち帰ることも、一つの「組み合わせ」だといいます。
写真集『KUMIAWASE 組み合わせ』
写真集『KUMIAWASE 組み合わせ』(画像提供:Nicolai Bergmann)
ニコライ・バーグマンさんの25年にわたる創作の軌跡を収めた写真集です。2025年に開催されたフラワーエキシビション「KUMIAWASE – 25年の軌跡を、25のフラワーアートと組み合わせで紡ぐ5日間 –」をきっかけに制作され、これまでに発表してきたアーカイブ作品に加えて、この本のために新たに撮り下ろした作品も収録されています。
一輪一輪の個性を大切にしながら、異なる花や植物を組み合わせることで生まれる美しさ。創作の原点やクラフトへのこだわり、色やかたちのとらえ方など、ニコライさんの創作の考え方にふれられる一冊です。340×265mmの大判で、写真の迫力や印刷・装丁にもこだわっています。
- ・判型:340×265mm
- ・ページ数:214ページ
- ・サイン会:10月31日(土)16:40〜 紀尾井テラス1F 花の広場(当日、写真集を購入した方が対象)
春のバラから、秋の実りへ
2026年5〜6月の「KIOI ROSE WEEK」に続いて、同じ水の広場での展示です。春と秋の違いを聞くと、こんな答えが返ってきました。
「春とは、雰囲気がまったく変わっています。そこを一番見て、感じてほしい。今回もまた違うものを作っているので、『何が出てくるかな』というワクワクを感じてもらえたらいいなと思います」
箱根の森と、紀尾井町の街
ニコライさんは、箱根の「ニコライ バーグマン 箱根 ガーデンズ」でもハロウィンの展示を手がけています。森の中の箱根と、街の中の紀尾井町。その違いについては、こう話します。
「箱根でいつも難しいのは、天気の変化。大自然の中で作るのとは、まったく違います。こういうきれいで平らな地面で作るのと、箱根のドラマチックな場所で作るのとでは、全然違いますね。箱根は自然と少し溶け込むところもあるけれど、ここはインパクトがある」
家で飾るなら、今は「実もの」に集中して
リーフラの読者に向けて、自宅で秋の花を飾るコツも聞きました。
「今の季節なら、花よりも実ものに集中してみてください。栗や、バラの実、花ナスなどいろいろな実ものや葉もの、枝ものといった、秋にしかできないものを楽しむのが、今のおすすめです」
小さな実をつけた観賞用トウガラシ(撮影:リーフラ編集部)
秋色に色づいたアジサイをトライにして使用(撮影:リーフラ編集部)
取材の合間に。ご自宅のみかんの木に、今年は8個の実
インタビューの合間には、こんな話題もありました。ニコライさんのご自宅には、みかんを頼んだら、なぜかみかんの木が届いたという楽しいエピソードがあります。その木に、今は8個の実がついているそうです。「今年は初めて、ちゃんと食べられそう」とニコライさん。スタッフの方に「もう食べたんですか?」と聞かれると「まだ食べていない」とのこと。食べるときの様子は、YouTubeやInstagramで紹介しようかなと、うれしそうに話していました。
季節の花に囲まれたニコライさんのご自宅の様子は、雑誌『STORY』の公式YouTubeチャンネルで公開されているルームツアーで見ることができます。
【ルームツアー】季節の花に囲まれたフラワーアーティスト ニコライ・バーグマンの家(雑誌STORY公式チャンネル)
会期中も手入れを続け、終了後は再利用へ
屋外での約2週間の展示となるため、会期中は約2日に1回のペースでメンテナンスを行い、植物の状態を確認しながら美しい姿を保つそうです。展示が終わったあとは、作品の土台やドライの素材を再利用する予定で、一部の植物は箱根の施設での再活用も検討されています。
10月31日は、ニコライさん本人のデモンストレーションも
ハロウィン当日の10月31日(土)には、16:00から紀尾井テラス1F 花の広場で、ニコライさん本人によるフラワーデモンストレーション(申込不要)が行われます。16:40からは写真集『KUMIAWASE 組み合わせ』のサイン会も。取材の最後には、来場する皆さんへのメッセージをもらいました。
「30日以上続いた雨がやっと終わって、素晴らしい季節になりました。私たちも、早く東京の秋を楽しみたい。ぜひこの作品を見に、遊びに来てほしいです」
ニコライ・バーグマンさん(撮影:リーフラ編集部)
あわせて見たい
取材・撮影:リーフラ編集部(2026年10月18日)。発言は、取材時のお話を読みやすく整えたものです。記事の内容は取材時点の情報で、変更になる場合があります。
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